映画『国宝』を観て
話題の映画『国宝』を観てまいりました。
題材は、日本が誇る伝統芸能・歌舞伎です。
そもそも私は「なぜ歌舞伎はそこまで人を惹きつけるのだろう?」と疑問に思い、
以前、東京出張の折に実際の歌舞伎を鑑賞したことがあります。
その際、観客席から役者にかける掛け声は他の舞台にはない間でかけられておりとても新鮮でした。
その掛け声は「大向う(おおむこう)」と呼ばれ、
役者の屋号や代数などを叫ぶことで舞台を盛り上げます。
🎭 古くから愛されるものには理由がある
今回の映画『国宝』では、ひとりの役者の人生が描かれていました。
その姿には、プライベートの幸せを捨ててでも芸の道に心血を注ぐ、
まさに“芸道に生きる者”の覚悟と潔さがありました。
己の成し遂げたいことに全力を尽くす――
それは仏教で言うところの「誓願(せいがん)」にも通じる生き方かもしれません。
👪 家族の寂しさと「覚悟」の狭間で
ただ一方で、彼の家族はどう感じていたのでしょうか。
身近な人だからこそ感じる一抹の寂しさは、計り知れないものがあったはずです。
「自分は良くても、周囲の人を思いやることで、
成し遂げたいことが遠ざかってしまうかもしれない」――
それは誠に難しい選択です。
仏教では「中道(ちゅうどう)」――偏らず、極端にならず、
バランスを大切にする道を説いています。
ただし、人生のどこかで振り切って生きなければならない瞬間があるのもまた事実です。
🌸 芸の道と仏の道
映画を観ながら私は思いました。
仏道を志す者もまた、ある意味では「世俗の幸せ」を手放す覚悟を持って歩み出します。
そこには、自己を超えて生きようとする意思があります。
映画『国宝』が伝えていたのは、
そのような“人生を懸けた道”の尊さだったのかもしれません。
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